短縮 URL は便利なツールですが、その手軽さゆえに思わぬトラブルを引き起こすことがあります。歴史を振り返ると、笑い話で済むものから国際的な問題に発展したものまで、短縮 URL にまつわる出来事があります。これらの事例から、短縮 URL を使う時の注意点が見えてきます。
まず紹介したいのは、ランダム生成された短縮 URL が意図せず不適切な単語になってしまう問題です。短縮 URL サービスには、英数字のランダムな組み合わせでスラッグを自動生成するものがあります。 6 文字のランダム文字列を生成する場合、理論上は約 568 億通りの組み合わせが存在しますが、その中には偶然にも英語の卑猥な単語や差別的な表現が含まれる可能性があります。スラッグが英語圏で下品な意味の単語と重なってしまう例もあります。この問題を防ぐため、「禁止語リスト」 (ブラックリスト) で不適切な文字列が生成されないようにするサービスもあります。しかし、世界の言語ごとに不適切な単語を拾い切るのは難しいことです。日本語のローマ字表記で不適切な意味になるケースもあり、多言語対応のフィルタリングは短縮 URL サービスの課題です。
2010 年に起きた「リビアドメイン事件」は、短縮 URL の地政学的リスクを浮き彫りにしました。リビアの国別コードトップレベルドメイン `.ly` を使う短縮 URL サービスもありました (bit.ly、ow.ly など)。しかし、2010 年にリビアのドメイン管理機関が、イスラム法に反するコンテンツへのリンクを含むとして `vb.ly` というドメインを没収する事件が発生しました。この事件は、特定の国の TLD に依存する短縮 URL サービスが、その国の法律や政治的判断によって突然サービスを停止させられるリスクがあることを示しました。 bit.ly は、代替のドメインとして `j.mp` も持っていました。
政府機関や公的機関でも、設定の誤りや仕様の変更で短縮 URL が使えなくなった事例もあります。公式の文書に載せた短縮 URL のリダイレクト先を誤って設定すると、無関係なページに読者を送ってしまいます。配信の後では、直すのが追いつかないこともあります。日本でも、自治体が防災情報の短縮 URL を印刷物に載せた後に短縮 URL サービスの仕様が変わると、災害時に情報へアクセスできなくなる恐れがあります。こうした事例から教訓を引き出せます。公的機関や重要な情報の発信では、外部の短縮 URL サービスに頼らず、自組織のドメインで短縮 URL を運用する方法があります。
サービス終了による大規模なリンク消失も、短縮 URL の歴史で起きた出来事です。 2009 年には、短縮 URL サービス「 tr.im 」が一時サービス停止を発表し、大量のリンクが一斉に機能しなくなる事態が懸念されました。発表は後に撤回されました。この騒動は、短縮 URL サービスが消えるとそこで作ったリンクも使えなくなるという弱さを示しました。 Google の goo.gl が 2019 年に管理画面と API の提供を終えたことからも、大手の短縮 URL サービスでも永続の保証は無いと分かります。この問題への対策として、Internet Archive は「 Wayback Machine 」で短縮 URL のリダイレクト先を保存するプロジェクトを進めていますが、保存できる範囲には限りがあります。短縮 URL を使う時は「このリンクが 10 年後も機能しているか」を考え、大事なリンクには自組織のドメインを使うことが、これらの事例から引き出せる教訓です。