「世界で最も短い URL は何か?」という問いは、一見シンプルですが、掘り下げると意外に奥が深い話題です。 URL の長さは「プロトコル (https://) 」+「ドメイン名」+「パス」で構成されるため、最短の URL を追求するには、それぞれの要素をどこまで短くできるかを考える必要があります。結論から言えば、理論上の最短 URL は `http://a.co` のような形式で、わずか 11 文字です (https の場合は 12 文字) 。しかし、実際にアクセス可能な最短 URL となると、話はもう少し複雑になります。
まず、ドメイン名の最短記録を見てみましょう。ドメイン名は「セカンドレベルドメイン (SLD) 」+「トップレベルドメイン (TLD) 」で構成されます。 SLD の最短は 1 文字で、実際に `x.com` (旧 Twitter が取得) 、`z.com` (日産自動車が長年保有し、後に売却) 、`q.com` (CenturyLink が保有) など、 1 文字の .com ドメインは実在します。ただし、 1 文字の .com ドメインは全世界で 26 個 (a-z) しか存在し得ず、そのすべてが 1990 年代に登録済みです。現在の市場価値は 1 ドメインあたり数百万ドルから数千万ドルと推定されており、一般人が取得することは事実上不可能です。 `x.com` はイーロン・マスクが 2023 年に Twitter のリブランディングに使用したことで話題になりましたが、このドメインは元々 1999 年にマスクが設立したオンライン銀行 X.com (後の PayPal) のために取得されたものです。ドメインの雑学に関する書籍は Amazon でも探せます。
TLD (トップレベルドメイン) の短さも URL の長さに直結します。最も短い TLD は 2 文字の国別コードトップレベルドメイン (ccTLD) で、 `.ai` (アンギラ) 、`.io` (イギリス領インド洋地域) 、`.ly` (リビア) 、`.to` (トンガ) などがあります。これらの 2 文字 TLD は、本来はその国・地域のために割り当てられたものですが、英語の単語と一致するため、短縮 URL サービスやテック企業に人気があります。 `.ly` は bit.ly をはじめとする短縮 URL サービスに広く使われ、 `.io` はテック系スタートアップの定番ドメインとなりました。面白いことに、これらの小さな国や地域は、ドメイン登録料から莫大な収入を得ています。ツバル (`.tv`) は、 2000 年に `.tv` ドメインの運営権を米国企業に 5,000 万ドルで売却し、この収入で国連への加盟費用を賄いました。人口約 1 万人の小国が、 2 文字のドメインで国家予算を潤すという、インターネット時代ならではの逸話です。
短縮 URL サービスが使用するドメインの短さ競争も興味深い歴史があります。 TinyURL (tinyurl.com: 11 文字) から始まった短縮 URL は、 bit.ly (6 文字) 、 goo.gl (6 文字) 、 ow.ly (5 文字) 、 t.co (4 文字) と、年々ドメインが短くなっていきました。 Twitter が採用した `t.co` は、主要短縮 URL サービスの中で最も短いドメインの 1 つです。日本発の短縮 URL サービスでは、 `p.tl` (4 文字) や `ux.nu` (5 文字) などが短さを競いました。ドメインの短さは、 SNS の文字数制限内でより多くのテキストを書けるという実用的なメリットに加え、「覚えやすさ」「口頭で伝えやすさ」というユーザビリティ上の利点もあります。ラジオや TV で URL を読み上げる場面では、ドメインの短さが情報伝達の効率を大きく左右します。
URL の短さにまつわる究極の雑学として、「 URL なしでウェブページにアクセスする方法」があります。実は、 IP アドレスを直接ブラウザに入力すれば、ドメイン名なしでウェブサーバーにアクセスできます。 `http://142.250.196.110` と入力すれば Google のサーバーに到達します (ただし、バーチャルホストの設定により、期待するページが表示されるとは限りません) 。さらに、 IP アドレスを 10 進数の整数に変換した形式でもアクセス可能です。 `http://2398801518` のような形式で、これは IPv4 アドレスの 4 つのオクテットを 1 つの 32 ビット整数として解釈したものです。この形式は一部のブラウザでサポートされており、フィッシング攻撃で URL を偽装する手法として悪用されることもあります。 URL の世界は、短さを追求すればするほど、インターネットの仕組みの深淵に触れることになる、奥深いテーマなのです。