「世界で最も短い URL は何か?」という問いは、一見シンプルですが、掘り下げると意外に奥が深い話題です。 URL の長さは「プロトコル (https://) 」+「ドメイン名」+「パス」で構成されるため、ここではそれぞれの要素をどこまで短くできるかを見ていきます。結論から言えば、理論上の最短 URL は `http://a.co` のような形式で、わずか 11 文字です (https の場合は 12 文字)。しかし、実際にアクセス可能な最短 URL となると、話はもう少し複雑になります。
まず、ドメイン名の最短記録を見てみましょう。ドメイン名は「セカンドレベルドメイン (SLD) 」+「トップレベルドメイン (TLD) 」で構成されます。 SLD の最短は 1 文字で、実際に `x.com` (X (旧 Twitter) が使用)、`z.com` (日産自動車が長年保有した後、2014 年に売却)、`q.com` など、1 文字の .com ドメインが実在します。ただし、実際に登録されている 1 文字の .com は、この `x`・`z`・`q` の 3 つだけです。残りのアルファベット 1 文字の .com は 1990 年代前半に予約 / 凍結され、新規に取得することはできません。こうした 1 文字の .com は、一般の人が取得できるものではありません。 `x.com` はイーロン・マスクが 2023 年に Twitter のリブランディングに使用したことで話題になりましたが、このドメインは元々 1999 年にマスクが設立したオンライン銀行 X.com (後の PayPal) のために取得されたものです。
TLD (トップレベルドメイン) の短さも URL の長さに関わります。最も短い TLD は 2 文字の国別コードトップレベルドメイン (ccTLD) で、 `.ai` (アンギラ)、`.io` (イギリス領インド洋地域)、`.ly` (リビア)、`.to` (トンガ) などがあります。これらの 2 文字 TLD は、本来はその国 / 地域のために割り当てられたものですが、英語の語や略語を思わせるため、短縮 URL サービスやテック企業に使われてきました。 `.ly` は bit.ly などの短縮 URL サービスに使われ、 `.io` はテック系スタートアップに使われることがあります。これらの小さな国や地域は、ドメインの登録料から収入を得ています。ツバル (`.tv`) は、1990 年代末に `.tv` ドメインの運営権を海外企業へ委ねました。契約総額は約 5,000 万ドル規模とされましたが、その後運営会社が交代し、IANA の登録 (2026 年 8 月 5 日更新) では技術の連絡先に GoDaddy Registry が載っています。このロイヤリティ収入は、ツバルの財源になっています。人口約 1 万人の小国が 2 文字のドメインから収入を得ているという、インターネット時代ならではの逸話です。
短縮 URL サービスが使用するドメインの短さ競争も興味深い歴史があります。 TinyURL (tinyurl.com: 11 文字) から始まった短縮 URL は、bit.ly (6 文字)、goo.gl (6 文字)、ow.ly (5 文字)、t.co (4 文字) と、年々ドメインが短くなっていきました。 Twitter が採用した `t.co` は、主要な短縮 URL サービスの中でも短いドメインです。日本発の短縮 URL サービスでは、 `p.tl` (4 文字) や `ux.nu` (5 文字) などが短さを競いました。ドメインの短さは、SNS の文字数制限内でより多くのテキストを書けるという実用的なメリットに加え、「覚えやすさ」「口頭で伝えやすさ」というユーザビリティ上の利点もあります。ラジオや TV で URL を読み上げる場面では、ドメインの短さが伝えやすさに関わります。
URL の短さにまつわる雑学として、「 URL なしでウェブページにアクセスする方法」があります。実は、IP アドレスを直接ブラウザーに入力すれば、ドメイン名なしでウェブサーバーにアクセスできます。 `http://142.250.196.110` と入力すれば Google のサーバーに到達します (ただし、バーチャルホストの設定により、期待するページが表示されるとは限りません)。さらに、IP アドレスを 10 進数の整数に変換した形式でもアクセス可能です。 `http://2398798958` のような形式で、これは IPv4 アドレスの 4 つのオクテットを 1 つの 32 ビット整数として解釈したものです。この形式は一部のブラウザーでサポートされており、フィッシング攻撃で URL を偽装する手法として悪用されることもあります。 URL の短さを突き詰めると、インターネットの仕組みに行き当たります。