`gogle.com`、`gooogle.com`、`googel.com`。これらのドメインにアクセスしたことはありますか? 有名サイトの URL をタイプミスしたユーザーのトラフィックを狙う行為は「タイポスクワッティング」 (Typosquatting) と呼ばれ、ビジネス (あるいは詐欺) として成立しています。タイポスクワッティングとは、有名なウェブサイトのドメイン名に似た文字列のドメインを取得し、タイプミスしたユーザーのトラフィックを横取りする行為です。この「タイプミスビジネス」は、広告収入やフィッシングの受け皿として無視できない規模の市場になっています。
タイポスクワッティングのトラフィック規模は、想像以上に巨大です。有名ブランドに似せたドメインは日々大量に登録されており、検索エンジンやショッピング、金融のように利用者の多いサービスほど狙われやすい傾向があります。 Google のような月間数十億アクセスのサイトでは、タイプミスのごく一部が偽ドメインに流れ込むだけでも膨大なアクセスになります。タイポスクワッターは、このトラフィックを広告表示 (パーキングページ) 、アフィリエイトリンクへのリダイレクト、競合サイトへの誘導、フィッシングサイトの運営などに利用して収益を得ています。1 つのドメインで得られる広告収入は限られていても、大量のドメインをまとめて運用することで収益が積み上がる構図です。
タイプミスのパターンには法則性があります。最も多いのは「隣接キーの押し間違い」で、 QWERTY キーボードの配列に基づいて予測可能です。 `google.com` の場合、 `g` の隣の `f` や `h` を押してしまう `foogle.com` や `hoogle.com`、 `o` の隣の `i` や `p` を押してしまう `gigle.com` や `gopgle.com` などが典型的です。次に多いのは「文字の脱落」で、 `gogle.com` (o が 1 つ足りない) や `goole.com` (g が 1 つ足りない) です。「文字の重複」 (`gooogle.com`) 、「文字の入れ替え」 (`googel.com`) も頻出パターンです。タイポスクワッターはこれらのパターンを網羅的に分析し、トラフィックが見込めるドメインを先回りして取得します。
短縮 URL とタイポスクワッティングの関係も見逃せません。 `bit.ly` のように短いドメインでは、小文字の l と大文字の I 、数字の 1 のように字形が似た文字を取り違えやすく、こうした紛らわしい文字列を使った類似ドメインが問題になります。短縮 URL は文字数が少ないため、 1 文字のタイプミスが致命的です。通常の URL であれば、ドメイン部分をタイプミスしてもパス部分で正しいページにたどり着けないだけですが、短縮 URL の場合はドメインのタイプミスがまったく別のサイトへの誘導につながります。
企業がタイポスクワッティングに対抗する方法は主に 3 つあります。第一に、自社ドメインのタイプミスバリエーションを先回りして取得し、正規サイトにリダイレクトする「防衛的ドメイン取得」です。 Google も `gogle.com` のような代表的なタイプミスドメインを自ら保有しており、そこへのアクセスは正規サイト側に向けられます。第二に、 ICANN (Internet Corporation for Assigned Names and Numbers) の紛争解決手続き (UDRP: Uniform Domain-Name Dispute-Resolution Policy) を利用して、タイポスクワッティングドメインの移転や取り消しを求める法的手段です。第三に、ブランド監視サービスを利用して、新たに登録されたタイポスクワッティングドメインを早期に検知し、対策を講じる方法です。タイプミスという人間の小さなエラーが、巨大なビジネスと法的争いを生み出しています。 URL の世界は、人間の不完全さと密接に結びついているのです。