短縮 URL は利便性が高い一方で、リンク先が見えにくいというセキュリティ上の課題があります。 OWASP (Open Web Application Security Project) の Cheat Sheet (2026 年 10 月時点) は、信頼できない入力に含まれる URL へ Web アプリケーションがリダイレクトしうる問題を「 Unvalidated Redirects and Forwards 」として扱っており、入力された URL へ転送する短縮 URL もこの問題と関わります。この記事では、技術的な根拠に基づいて短縮 URL のセキュリティリスクと対策を解説します。
短縮 URL のセキュリティリスクとして、リンク先の URL が隠れる点が挙げられます。通常の URL であれば、ドメイン名からリンク先の信頼性をある程度判断できます。しかし、短縮 URL ではリンク先が不明なため、フィッシングサイトやマルウェア配布サイトへの誘導に悪用される可能性があります。 リンク先を隠せる短縮 URL は、フィッシング攻撃の隠れ蓑として悪用されることがあります。
実際のフィッシング攻撃パターンとして代表的なものを 3 つ紹介します。第一に、正規サービスを装ったメールに短縮 URL を埋め込み、偽のログインページへ誘導する手口です。短縮 URL によりドメインが隠蔽されるため、受信者は正規サイトと区別しにくくなります。第二に、SNS の投稿やダイレクトメッセージに短縮 URL を含め、マルウェアのダウンロードページへ誘導するパターンです。第三に、QR コードに悪意のある短縮 URL を埋め込み、公共の場に掲示する「 QRishing 」と呼ばれる手口もあります。
プレビュー機能は、短縮 URL のセキュリティの基本的な対策です。リンク先の情報を事前に確認できるプレビュー機能を提供する短縮 URL サービスもあります。プレビューでは、遷移先の URL、ページタイトル、OGP 情報、HTTPS の使用有無などを確認でき、不審なリンクを見分ける手がかりになります。
HTTPS の確認は重要なセキュリティチェックポイントです。リンク先が HTTPS を使用していない場合、通信内容が傍受されるリスクがあります。特に、ログイン情報や個人情報を入力するページへのリンクでは、HTTPS かどうかを確かめておくと、入力した内容を守りやすくなります。
技術的な対策として、CSP (Content Security Policy) ヘッダーとリファラーポリシーの設定も使えます。 CSP ヘッダーの navigate-to ディレクティブで、ページからの遷移先ドメインを制限する考え方もあります。ただし、navigate-to は現行の CSP の仕様で確かめられないため、補助的な考え方にとどめるのが現実的です。リファラーポリシー (Referrer-Policy ヘッダー) を strict-origin-when-cross-origin に設定すると、短縮 URL サービスなど別のオリジンへのリクエストで送られるリファラーはオリジンまでになります。これにより、リダイレクト元のページのパスやクエリは第三者へ送られません。
パスワード保護機能を活用すれば、短縮 URL へのアクセスを制限できます。機密性の高い情報を共有する際は、パスワード付きの短縮 URL を使用し、パスワードは別の通信手段 (電話、別のメッセージアプリなど) で共有することで、セキュリティを強化できます。
有効期限の設定も、セキュリティの対策として使えます。短縮 URL に有効期限を設けることで、不要になったリンクが長期間にわたって悪用されるリスクを軽減できます。 セキュリティの面でも、リダイレクト URL の有効期間を必要な長さにとどめる考え方があります。
デメリットとして、セキュリティ対策を厳格にしすぎると利便性が低下するトレードオフがあります。プレビューを毎回表示させるとクリック率を下げる要因になり、マーケティング用途では逆効果にもなりえます。用途に応じてセキュリティレベルを使い分けることが重要です。機密情報の共有にはパスワード保護と有効期限を併用し、マーケティング用途ではプレビュー機能をオプションとして提供するのが現実的なバランスです。
組織のセキュリティポリシーとしては、信頼できる短縮 URL サービスだけを使うルールが考えられます。不明な短縮 URL をクリックしない、社内共有には承認されたサービスのみを使用する、定期的にセキュリティ教育を実施するなど、組織全体でのセキュリティ意識の向上が重要です。