## 「クリックするとページが開く」は当たり前じゃなかった
青い文字をクリックすると別のページに飛ぶ。私たちが毎日何十回もやっているこの動作、実はとんでもない発明のおかげで成り立っています。その発明の名前は「ハイパーリンク」。今では当たり前すぎて意識しませんが、これがなかったら今のインターネットは存在しません。
## 本の索引とハイパーリンクの違い
本の巻末にある索引 (さくいん) を思い浮かべてください。「インターネット → 42 ページ」と書いてあれば、自分で 42 ページを開きますよね。辞書の「→ 参照」も同じで、自分でそのページをめくる必要があります。
ハイパーリンクは、この「自分でページをめくる」という手間をゼロにしました。クリックするだけで、世界中のどのページにも一瞬で飛べる。しかも、その先のページからさらに別のページへ、そしてまた別のページへと、どこまでも情報をたどっていけるのです。
本の索引は「同じ本の中」しか案内できませんが、ハイパーリンクは「世界中のあらゆるページ」を案内できます。この違いは革命的でした。
## ティム・バーナーズ=リーの発明
1989 年、イギリスの科学者ティム・バーナーズ=リーは、ヨーロッパの研究機関 CERN (セルン) で働いていました。世界中の研究者が論文や資料を簡単に共有できる仕組みが欲しい。そう考えた彼が作り上げたのが World Wide Web (WWW) です。
彼が設計したのは 3 つの仕組みでした。
- HTML: ページの書き方のルール。文章に「ここはリンクだよ」という印をつけられる - URL: ページの住所の書き方。世界中のどのページにも一意の住所を割り当てる - HTTP: ページを届ける方法。ブラウザとサーバーが会話するためのルール
この 3 つが組み合わさることで、世界中のコンピュータに置かれた文書を、リンクひとつでつなげられるようになりました。
特筆すべきは、バーナーズ=リーがこの発明を特許にせず、誰でも無料で使えるようにしたことです。もし特許を取って使用料を請求していたら、今のように誰もが自由に Web サイトを作れる世界にはなっていなかったかもしれません。彼のこの判断が、インターネットの爆発的な普及を支えたのです。
## リンクが世界をつなぐ仕組み
ハイパーリンクの本質は「情報と情報をつなぐ橋」です。
日本の学生が書いたブログ記事から、アメリカの大学の研究論文にリンクを張れる。その論文からイギリスの新聞記事にリンクが張られている。新聞記事からはオーストラリアの政府統計にリンクがある。こうして、世界中の情報がクモの巣のようにつながっています。
Web という名前は、まさにこのクモの巣 (web) のような構造から来ています。誰かが 1 本のリンクを張るたびに、この巨大なクモの巣は少しずつ大きくなっていくのです。
## リンク切れという問題
しかし、リンクには弱点もあります。それが「リンク切れ」(デッドリンク) です。
リンク先のページが削除されたり、URL が変わったりすると、クリックしても「404 Not Found」というエラーが表示されます。せっかくの橋が壊れてしまった状態です。
ある調査では、10 年前の Web ページに含まれるリンクの約半数がリンク切れになっているとも言われています。情報をつなぐ橋は、放っておくと朽ちてしまう。これは Web の大きな課題のひとつです。
## 短縮 URL とリンクの寿命
短縮 URL は便利ですが、リンクの寿命という点では注意が必要です。
短縮 URL は、短縮サービスのサーバーを経由して転送先に飛ばす仕組みです。つまり、短縮サービスが動いていないと転送できません。もし短縮サービスが終了したら、その短縮 URL はすべてリンク切れになります。
実際に、過去にサービスを終了した短縮 URL サービスもあり、何百万ものリンクが一夜にして使えなくなりました。短縮 URL は「サービスが続く限り有効」という条件付きの橋なのです。
大切な情報へのリンクは、短縮 URL だけに頼らず、元の URL も記録しておくのが安全です。レポートの参考文献や、大事なブックマークには、元の長い URL を残しておきましょう。
## まとめ
ハイパーリンクは、情報と情報をワンクリックでつなぐ革命的な発明でした。本の索引や辞書の「参照」とは次元の違う便利さを私たちにもたらし、世界中の知識をクモの巣のようにつないでいます。
ただし、リンクは永遠ではありません。リンク切れや短縮 URL サービスの終了といったリスクを知った上で、上手にリンクを活用していきましょう。
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