ワイルドカード DNS とは、DNS レコードのホスト名にアスタリスク (*) を使い、任意のサブドメインを 1 つのレコードで一括して同じ IP アドレスやドメインに向ける設定です。「*.example.com」と設定すると、abc.example.com、xyz.example.com、anything.example.com のすべてが同じサーバーに向けられます。
ワイルドカード DNS の設定は「*.example.com A 192.0.2.1」のように、ホスト名の部分にアスタリスクを指定するだけです。個別のサブドメインに対する明示的なレコードが存在する場合は、そちらが優先されます (ワイルドカードはフォールバックとして機能)。合致の規則には細かい条件があり、残りのラベルが複数あっても合致する一方で、問い合わせ名とワイルドカードの親の間に別の名前が存在する場合には使われません。foo.bar.example.com は *.example.com に合致しますが、bar.example.com に何らかのレコードがあると合致しなくなり、*.bar.example.com を別に用意する必要があります。
短縮 URL サービスでのワイルドカード DNS の活用例として、ユーザーごとにカスタムサブドメインを提供するケースがあります。「user1.short.example.com」「user2.short.example.com」のように、各ユーザーに専用のサブドメインを割り当てる場合、ワイルドカード DNS を使えば個別のレコード設定が不要になります。サーバー側でリクエストのホスト名を解析し、ユーザーを識別します。
SaaS プラットフォームでもワイルドカード DNS は広く使われています。顧客ごとにサブドメインを割り当てるサービスでは、テナントが増えても DNS 側にレコードを追加せずに済むため、この方式が定番の選択肢になります。サブドメインが数千規模になると、個別レコードの発行と削除を運用で回すのは現実的ではなくなります。
ワイルドカード DNS の注意点として、意図しないサブドメインへのアクセスもすべて受け入れてしまうため、サーバー側で適切なバリデーションが必要です。存在しないサブドメインへのアクセスに対して、適切なエラーページを返す実装が求められます。また、ワイルドカード SSL 証明書 (*.example.com) と組み合わせることで、すべてのサブドメインで HTTPS を有効にできます。